• 長久手市大学連携推進ビジョン4U

小島:大原さんは、長久手でどのような活動をされているんですか?

大原:障がい者の就労支援をしています。今の社会はできることを伸ばしていこうというより、できないことにスポットが当たってしまいがちですが、そうではなく、それぞれのできることをたくさん集めたらいいのではないかというのが、私たちの考える「働く」ということです。例えば農業は、種を蒔く人、苗を植える人、水をやる人、それに田んぼだと水が入っているかどうか見るだけの人もいる。いろいろな仕事があるので、この人にはどんな仕事が向くかなと一緒に考えていきます。この方法通りにしてくださいという指導ではなく、共に働く仲間として、その人がどうしたら働きやすくなるか、あるいはいいところを見つけてその人に合う仕事を考えたりしています。

小島:なぜ、こうした活動を始められたのでしょう?

大原:私自身は福祉の世界に入ってまだ日が浅いのですが、もともとの「楽歩」は、この地域には障がい者の支援があまりなく、働き先や居場所がなかったため9年前に設立されました。今、この長久手市に住む障がい者の中で、地域に出られている方は全体の2割くらい。在宅の方が結構多く、家族も「家にいてもらって構わない」という考えだったりします。本人は地域に出たくないと思っているわけではないのですが、地域も受け入れる状況でないと、なかなか家から出ることができない。でも、私たちももし自分の身体が不自由になったとき、階段が昇りづらかったら、扉が開けづらかったらどうするの…というところから、いずれ自分がそうなったときにも暮らしやすい社会であるよう考えていこうと思いました。

小島:「子ども食堂」の活動もされていますが、これはどんなきっかけから?

大原:今年の7月で3年目になりますが、きっかけは、地域の方から「夏休みが終わると痩せて学校に来る子がいる」と聞いたことでした。長久手市にもある問題とは思わず、「給食で栄養をとっているからだよ」と理由を聞いて驚きました。そんなころ、偶然「子ども食堂」という取り組みを知り、この活動ならできそうだと始めました。チラシやポスターで告知をしたら、17名集まりましたが、特に困っている子たちではありませんでした。でも、「子ども食堂」を続けてわかったのは、困り事は本当にいろいろで、食事ができない子だけでなく、実はお母さんも悩んでいたりするということ。急に人口が増えた長久手は、お母さんたちもよそから来た人で、話し相手がいない。子どもに話し掛けてくれる人も、挨拶する人も少ない。子どもを取り巻く問題は、子どもだけではなく家庭、地域など、本当にさまざまな理由があるのだと、活動を通して初めてわかってきました。

小島:最近では、この地域の団地も訪問していると聞いたのですが。

大原:本当に困っている子がいるのでは…というところから始めたのですが、そもそも長久手にいるのだろうかという気持ちもあって、昨年、長久手市の保育士さんを対象にアンケートをとりました。「自分たちの保育園に来ている子たちで、朝食を食べていないと思われる子はいますか?」「季節外れの服を来ている子がいると思われますか?」とか「病院とか歯医者さんに通院していないと思われる子はいますか?」とか、先生に直感的にお尋ねしました。すると、朝食を食べていないと思われる子は15%で、季節外れの服を着ていると思われる子は25%、病院などにかかっていないと思われる子は27%もいる。あまり実感としてなかったのですが、新しく人が入ってきて、中にはさまざまな悩みを抱えている人たちもいて、だんだん問題も増えていくかもしれないという危機感を感じさせる結果でした。それで本当に困っているのはどこか、アンケートから地域的なことが見えたので、実際にそこに行くと、苦労していることや困っていることが少しずつ見えてきました。

小島:そうした活動の中から、これからの若者たちに願うことはどんなことでしょうか?

大原:まず何か始めてみること。始める前は不安なこともいっぱいあるかもしれないけど、仕事ではないし、もしうまくいかなかったら違う方向に進めばいい。続けなければかっこ悪いわけでもなく、自分の考えが変わったら変えてもいいし、まずやってみること。ここにいる皆さんは、既に活動を始めていたり、やってみたいことがあったりすると思いますが、その思いを次の人に伝えてください。仲間をどんどんつくっていくと、自分が必要とするときにも助けてもらえる社会ができています。

 

小島:今日は愛知淑徳大学の卒業生もお呼びしているので、彼からも話を聞きたいと思います。

都築:2014年に卒業して、現在は長久手市役所に務めています。

小島:豊田市在住ということですが、なぜ長久手市役所に?

都築:きっかけはボランティアです。同じ学部生の大半が「あじゅあす」というヘルパーサークルに入っていたので、僕も大学2年生のときに参加しました。メンバーは女子ばかりで男子は珍しく、入った瞬間に部長になって(笑)。ここでしていたのは、重度の知的障がい者や障がい児の方のヘルプです。一緒に買い物に行ったり、施設に行ってイベントをしたり、ボランティアをしました。そのとき感じたのは、勉強ができて福祉の知識のある人が現場で一番役に立つわけではなく、相手に合わせてよく動ける人がその場で一番輝いていたこと。僕は勉強が苦手だったので(笑)、そこが面白いと思い、以後さまざまなボランティアに参加し、長久手市の事業や「市民まつり」の実行委員も自分から応募してやっていました。

小島:確かに、ボランティアしている都築くんは、大学の授業時と違って、いきいきとしていたよね(笑)。

都築:当時、近隣のボランティアの部長が集まる会議があって、隣席が愛知県立大学の学生だったのですが、東日本大震災の被災地に行ったとき、被災者さんから「役に立ったのは行政のシステムではなく、近所同士のコミュニティ」と聞いたそうです。東海地方にも大きな災害が起こると予測される今、リニモ沿線にはたくさんの大学があるので、学生がリニモ沿線を盛り上げ、プラス街に暮らす方同士で助けを求め合えるまちにしたいと、みんなで「リニモ沿線合同大学祭」というサークルをつくりました。その活動をしているうちに長久手市内に出かけることが増え、次第にこのまちに愛着が湧き、このままここにいたいなあと今に至っています。

小島:そこまで長久手市を好きになってしまった理由は?

都築:長久手市に通学しているといっても、それまでは大学内にしかいませんでした。それが、ボランティアを始めたら急に活動範囲が広がり、だんだん自分の地元のように思えてきて、知れば知るほど好きになりました。

小島:そんな経験をしてきた都築くんが、学生たちに伝えたいことはありますか?

都築:このまち全部がキャンパスだと思って、学びの場にして欲しいです。特に長久手市は今、学生の力を生かしたいと大きな扉を開いているので、そこにどんどん踏み込んでいけば、自分にとってもいい体験ができると思います。

 

小島:お二人がお仕事をしていく中で、一番大事にしていることは何ですか?

都築:ユーモア(笑)。面白く過ごしていた方が、やっぱりいろんなことがうまくいきます。

大原:目の前にいる人のことを一生懸命考える人になる。誰かが困っていたら、一緒に考える人でありたいです。

小島:今後、チャレンジしたいことはありますか?

都築:今は仕事だけをしている感じなので、学生時代に一緒に活動していた人たちと、もう一度何かやってみたいなという思いが最近出てきました。仕事とは別にプライベートで、地域貢献とかしてみたいです。

大原:子ども、高齢者、障がい者のことなど、みんなが自分のこととして考えられる社会になっていけばいいなと思っています。なので、一生懸命いろいろな努力をしている人たちの応援をしながら、自分の目の前のことだけではなく、地域が変わっていくための協力をしていきたいと思っています。

(2017年8月4日、第2回ワーキング、愛知淑徳大学)