• 長久手市大学連携推進ビジョン4U

長久手との地域連携の取り組みは、1997年から。当時は長久手町でしたが、まさに私がこの大学に赴任した年に始まりました。現在は美術学部学部長の白木彰先生のもとに、「せっかく長久手に芸術大学があり、デザインの研究室があるので、いろいろな事業に関して楽しいことができないだろうか」と相談があり、赴任したての私も参加することとなって、以後20年にわたりさまざまな事業をしています。

 

最初は、1998年に運行が始まった「Nバス」です。今でこそ、全国の自治体に800以上のコミュニティバスがあるそうですが、当時はまだ珍しい存在。東京都武蔵野市の「ムーバス」というシティバスが先駆けとなり、それを追うように長久手もコミュニティバスを導入しました。そこで、車体に色を塗って欲しいという要望だったのですが、白木先生が「それだけではつまらない、全部やりましょう」と、バスの外装だけでなく、バス停、時刻表など、運行に関わる全てのデザインを引き受けることになりました。以来、白木先生がアートディレクターで方針を示し、僕がデザイナーとして関わるという関係が続いています。

来年、運行20年。第1号は現在のバスより大きめの車体で、このグラフィックは、色とりどりのいろいろな幾何形体を自由に組み合わせることによって表現しています。このデザインの利点は、さまざまな方向に展開可能ということ。シンボルマークのようなデザインは、わかりやすい反面、展開性がありません。幾何形体の組み合わせなら、自由自在です。細い所も広い所も、丸い面にも地面にも、天井にも壁面にも展開していけます。

 

積み木のように発展するグラフィックとして最初に提案すれば、次にはどんなものでも展開可能です。なので、車椅子ユーザーの方も利用できる軽自動車の「Nミニ」も、「Nバス」のデザインを踏襲しながら全く同じデザインではなく、それにふさわしいパターンを選択しています。バスや軽自動車だけでなく、職員さんの名刺、リサイクルボックス、地域振興券やその取扱店のステッカー、いろいろ展開できます。それらが好評を得たので、長久手町のシンボルロゴから、2001年の「長久手町制施行30周年」のロゴまでつくりました。実にいろいろな展開ができる。自由自在が一番のメリットだと思います。

 

また、長久手町役場からは封筒のデザインも依頼されました。役場にはさまざまな部署があるので、3年か4年の間に100種類ほど手がけたと思います。また、「福祉の家」が設立されるにあたり、そのシンボルマークも温かな心をイメージしてつくりました。そこに付設している温泉、「ござらっせ」のシンボルマークなども手がけています。

2005年に「愛・地球博」開催が決まり、町内に「ウエルカムながくて」という看板を立てることになりました。看板にはさまざまな形がありますが、色と形のパターンがあれば、形にとらわれることなく、自由に展開できる。当時、町内にはこの看板がずらっと立っていました。開幕を告知する、モリゾーとキッコロのついたステッカーもデザインしました。このステッカーをクルマに貼っている人も多かったです。

 

そして2006年には、長久手村から数えて誕生100年という事業があり、そのシンボルロゴも作成しました。白木先生と私の案、2案提出したら、どちらも採用になりました。長久手さんがユニークなのは「いいですね、これも使用させてください」と面白がって、ひゅっと受け入れてくださるところ。我々としても、仕事していてとても楽しいです。

 

2006年には、水津先生と一緒に「長久手町平成こども塾」を手がけ、サインボードを丸太でつくりました。そして翌年には「あぐりん村」。このときは、ロゴとキャラクターも作成しました。そして、「長久手とワーテルロー交流提携15周年記念」のシンボルロゴ。ワーテルローの戦いで有名なベルギーのワーテルローは、古戦場つながりで長久手と姉妹都市だそうです。これも2案提案したら、「どちらもいいので二つつくりましょう」とおっしゃる。シンボルマークは普通一つですが、慣例を気にしないでどんどん試みる柔軟性が面白いです。

2007年に始まった「ながくてアートフェスティバル」は今も続いていますが、シンボルマーク、ロゴなどを作成しています。それから、「リニモ」のラッピングデザインも担当しました。「リニモ」は長久手の直轄ではありませんが、「Nバス」と絡めたデザインを意識した部分もあります。

 

今走っている2代目の「Nバス」は、少しデザインを変えました。それから「第5次長久手町総合計画案」のシンボルロゴ、それから2012年に長久手町から長久手市に移行したので、テーマカラーを以前より少し落ち着いた色合いにしたロゴマークにしました。町から市になって、少し大人になったというイメージです。そんな色展開で、市の境界に立てる「Hello!」「See You!」と書かれたウエルカム看板も変えました。最近では、ハイエース仕様の「Nバス」、長久手市消防本部から依頼された「火災予防標語横断幕」を手がけています。

 

本日お話したのはごく一部ですが、このようにグラフィック研究室は長久手さんから声をかけていただき、それに対して我々はいろいろなアイデアを出し、面白がりながら応えるということで、さまざまなグラフィックデザインを提供してきました。まちを良くするための提案をし、それが受け入れられ、非常に良好な関係がつくれたと思います。良いデザイナーはもちろんですが、良いクライアントがいないと良いデザインは成立しません。今後とも、地域のための連携をしていきたいと思っております。

   

 

 

 

 

 

(2017年9月23日、第4回ワーキング、愛知県立芸術大学)