• 長久手市大学連携推進ビジョン4U

 

長久手市内での活動の一つに、「あいちサトラボ」があります。モリコロパークの中にある2ヘクタールのスペースを、愛知県と一緒に里山づくり活動を行うエリアにしました。場所が長久手市内なので、長久手市の農家の方にご協力いただいています。当初はがれきだらけで、一体ここで何ができるのかという場所でしたが、愛知県が「県民の自主的なアイデアでやりたいことをしてもいいよ、それを応援するよ」と言ってくれたので、やりたいことのある人たちが40名ほど集まり、みんなで話し合いをすることになりました。

 

始まりは2007年で、私は造園のディレクションで10年間関わっています。最初は何をしようかという話し合いから始まり、もう喧々諤々。万博の記念館のようなものをつくりたいとか、科学技術の展示がしたいとか、いろいろな意見が出たのですが、最終的にみんながやりたいと言ったのは、当時テレビで流行っていた「ダッシュ村」でした。里山をいろいろな実験ができる場所にして、それを自分の地域に持ち帰って役立てたい。そんな意見をまとめるまでに約2年間。そしてそれを実現するために、公園設計から始まり、最低限の工事をするまでにだいたい4年かかりました。

 

それからの3年間は準備期間です。みんなで農作業を行うのですが、集まっているのは経験のない人ばかり。石ころだらけの場所に何が育つのか、最初は「ソバを植えて、収穫したらうまいじゃないか」という勢いから始まり、長久手の農家さんに田んぼの土を分けてもらって入れました。それと同時にアドバイスもいただき、育て方を教わりました。

 

こんな経験不足な状態にも関わらず、水田がやりたいという発言が出て、そんな急にできるわけがないと思ったのですが、インフラだけは整えようということで、一番奥の○○をせき止めたら池ができた。この池の水を使って稲作をやることになり、失敗をしながら、また農薬を使う使わないの議論などもしながら、見よう見まねで農作業を行いました。

 

すべてが手探りで、ゼロから里山の活動を体験し、そしてそれを自分たちの行動の糧にしたい。「サトラボ」は、そんな人たちの実験の場です。場所は愛知県営の公園内で、事業としても愛知県ですが、長久手市の協力なくしてはできません。長久手市内の実際の里山の農家の協力があって初めて実現できることで、現在も有志によって続いております。最初は何もなかった場所に、今は田や畑、湖があり、山の管理をして出た材木や枝を利用してここを豊かにするなど、全体を循環させるという目的もあります。

 

では、この活動の意義は何か。市民あるいは県民は、こうした場を使うユーザーですが、ユーザーは与えられるだけでは満足できません。愛知県が全て用意して、「さあ、みなさん使ってください」というのではなく、やりたい人が自主的にやりたいことを自分で責任を持って楽しむ。あるいは、自分たちが必要な情報や人間を自ら集める。設計にも計画的に「余白」を盛り込むことで、参加性や満足度が高まります。使う人の自主性を高めるためには、公共施設としてどうしたらいいか、そんな大切な試みとしてこの「サトラボ」が行われています。

 

それからもう一つ、長久手市との連携に「環境デザイン夏期講座」があります。これは、愛知県立芸術大学デザイン専攻の4年生の授業に組み込んだゼミです。その年のテーマである市町を1カ月半ほどかけて調査し、歴史、地理、産業などから資源の発見と同時に問題の抽出をし、それらの解決策を考えます。そして、行政の方の前でプレゼンテーションをするのですが、去年は長久手市に愛知県内の市町職員の方30名ほどに集っていただきました。長久手市の問題提起からその解決、デザインの提案まで行う学生にとって、長久手市長や職員の方から、直接感想や意見が聞ける貴重な機会になっています。

 

長久手市以外での地域連携では、名古屋市内の本山交差点のデザイン、碧南市内の廃線になった線路を細長い公園にするデザイン計画などがあります。碧南市の場合、どのような公園にするか市民参加で皆さんの意見を聞きました。通常なら、集まった意見を抽象的な言葉に置き換えて、設計者が勝手に設計することになる。そうではなく、市民の要望を受け止めるため、皆さんの意見と我々の意見を、その場その場で模型にするというワークショップを行いました。これには1年かかりましたが、1年たったところで計画の模型ができあがっていました。それが基本設計になり、市民の要望を形にしているということで、議会での質問に対しても、模型が役に立つというのは新しい方法だと思います。今年は遊具のデザインもして、それでこの公園は完成になりますが、うちの大学としても地域に関わることによって、地域に個性的なデザインが展開されることを期待しています。

 

現在平均年齢の低い長久手市も、今後は高齢化社会を迎えます。最近、栃木県の高齢者施設を設計したのですが、これからは高齢になったときに、居心地のいい空間で生活できるように設計することが重要です。この栃木の施設では、うちの彫刻科の学生に門柱をつくってもらいました。1カ月ほど現場に泊まり込み、皆さんが住んでいる中に音を立て、真っ白な粉を巻き上げながら。でも、できていく過程を皆さんが見守ってくれ、完成時には喜んでお祝いしてくれるような雰囲気でした。ものをつくることが、そこに住む人たちの喜びにつながっているところが、ただの工事ではない。アートスクールの学生がやっていることは、完成したものを鑑賞するだけでなく、実はつくっている過程に大きな価値がある。それが実現できました。

 

そういう意味では、愛知芸大には資源がいっぱいあります。僕はデザインとは、半分は問題の発見、半分は問題の解決だと考えています。長久手市との連携も、まちの中にどんな資源や問題があり、どんな取り組みが可能なのかを見つけ、そして選ぶ。ここまでは一般の人にもできます。それが決まったら、今度はそれを解決するためにどうすればよいか。これはかなり専門的な分野になりますので、我々がお膳立てをして、特殊な検討をいろいろ重ね、良いコンセプトを出していく。全体のデザインのうちの半分は専門家が、半分はみんなで一緒に考えるのがいいと思っています。僕は教える専門家ではなく、一緒に考える専門家として、ともに勉強していきたいと思っています。

(2017年9月23日、第4回ワーキング、愛知県立芸術大学)